第2回 経営計画とは 

目次

 

はじめに

この度の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、日常生活や事業活動に影響を受けていらっしゃる皆様に心よりお見舞い申し上げます。

4月以降、新型コロナウイルス感染症に関連するコラムを記載してきました。今月もコロナ関連にしようかどうしようか考えておりましたが、コロナばかりでは気が滅入りそうなので、第一回目のコラムの続編を何回かに分けて記載していこうかなと思います。

先月まで、再三「もらえるものはもらっとけ」「借りれるものは借りておけ」的な記事を書いてきました。足元のキャッシュについては、落ち着いた皆様も多いのではないでしょうか。

キャッシュを確保できたのであれば、そろそろ「借入を返すための出口戦略」を考え始めても早すぎることは無いかなと思っております。

持続化給付金をはじめ各種の補助金・助成金関係は、一部例外を除き返却不要ですが、金融機関から借りたお金はいつか返さなければなりません。

今回のコロナ関連融資は、通常より据置期間も返済年数も長くとられています。返済開始となる3年後、5年後から返済が完了する10年後、15年後までのキャッシュフローを今からイメージしてみませんか?

そんな時には経営計画(事業計画)です。

厳密には経営計画と事業計画の定義は異なるようです。

  • 経営計画→理念的なもの
  • 事業計画→数値的なもの

といった感じになるかと思いますが、本コラムにおいては、まとめて「経営計画」と記載したうえで、極力簡単に内容を確認していきます。

毎度のことですが、私見が大量にちりばめられている旨ご了承ください。

 

ステップ1 経営計画についてイメージを持ちましょう

漠然と「経営計画」と言ってもイメージを持ちにくいかもしれません。弊社では、以下のような3つのステップから経営計画書の作成をお手伝いしております。

  • 経営計画その1  経営理念・経営基本方針・行動指針
  • 経営計画その2  損益計画
  • 経営計画その3  財務計画

この3つの項目に沿ってそれぞれ計画を立てていけば経営計画は完成です。

「経営計画を作ってみましょう!」とご提案差し上げると、「今後の売上なんかわからないし、経営計画通りに事業は進まないし意味がない」というご意見をいただくケースが多々あります。

これは「経営計画」に対して

  • 経営計画書とはビシッとした崇高なもの
  • 経営計画通りに事業が進まなかったら作成した意味がない

といったイメージが強いのかなという印象があります。

本コラムにおける「経営計画」とはこのような崇高なものをイメージしておりません。

~はじめに~にも記載した通り、「今後のキャッシュフローをイメージしておく」ことに重点を置いております。

経営は計画通りに進みません。

実際の経営状況と当初イメージしていた経営計画を比較することが最も重要になります。

そこに数値的な乖離があるのであれば、その原因を把握し、改善策を打つための道しるべにする!といったイメージで経営計画をとらえていただけたら良いのかなと思います。

経営計画の策定期間につきましては、5か年程度の中期計画を策定後、1年ごとの短期計画を立てていく方法が有効であるものと考えております。

「今後5年間の売上なんてわからないよ!」

当然です。

今の売上が今後5年間変わらなかったとしたならば、5年後のキャッシュポジションがどうなっているか見てみればよいのです。

5年後の資金ショートが見込まれるなら、今から5年かけて改善策を実行していけばよいのです。

5年後にキャッシュリッチが見込まれるなら、設備投資を検討し事業の拡大を狙ってもよいかもしれません。

このような感じで経営計画を使っていただけたら良いのかなと思います。

まずは、経営計画を作成してみる!それを毎年繰り返す!ことが重要です。

毎年繰り返すことで計画の精度が上がっていきますし、先がイメージできるので経営も楽しくなります。金融機関との資金調達折衝も格段とスムーズになるはずです。

 

 

ステップ2 経営理念・経営基本方針・行動指針とは

まずは経営理念等です。本コラムでは深く触れません。

経営理念等につきましても学術的な定義はありますが、極力簡単に…

経営理念等とは「その企業の価値判断のよりどころ」

といったイメージでしょうか。

日々の業務の中で何かを判断しなければならない局面は多々あります。これは経営者に限らず従業員も同様です。

そんな判断に迷うケースが出てきた場面において「経営理念」が力を発揮します。

「自社の経営理念に照らしたら何が正しいのか」

を判断基準とすることで、おのずと答えが見えてくるからです。

この部分だけでも、自社の経営理念を作成し、全社に浸透させることの重要性がご理解いただけるのではないかと思います。

本コラムのいたるところに「会計情報は経営意思決定のためにある!」と記載しておりますが、こちらは弊社の経営理念の一部です。

税理士事務所にもかかわらず、今のところ税金に関するコラムが一本もないのは、こんなところに理由があるのかなと私自身も再認識しました。

もちろん税法も好きですので、そのうち税金に関するコラムも記載していきたいと思います。

 

ステップ3 損益計画を作成する前に

損益計画立案の前に必要な事前準備です。

「経営者として、どれだけ利益をあげたらよいのか」を考えても、なんともボヤっとしますね。

経営計画を作成するうえで、一つの目安が『必要利益』という考え方です。

以下、『必要利益』について記載します。

振り返りとなりますが、第1回のコラムでは『PDCAサイクル』について触れました。要点は以下の通りです。

  • 自社のチェック『C』から始めましょう。
  • 損益の構成要素には「売上」「粗利率」「固定費(販管費)」があります。
  • 自社の「売上」「粗利率」「固定費(販管費)」について健康診断をしましょう。
  • 上記1~3を踏まえて、自社の現状を正確に把握しましょう。

自社の健康診断が完了している皆様にとって、必要利益の算定は難しくありません。健康診断が完了しているという前提のもとお話を進めていきます。

【必要利益を知る】

『必要利益』とは、「借入金を返済して、税金を支払ってもお金が減らない利益水準」のことをいいます。

中小企業にとっては最も重要なものはキャッシュフローです。キャッシュがなくなると会社は潰れます。

キャッシュフローを維持するためには、自社の『必要利益』を把握しておくことが最も重要になってきます。

『必要利益』は以下の算式により計算します。

『必要利益』=(借入金元本返済額-減価償却費)÷ 0.7

0.7で割り返すのは、税引後利益で借入金を返済することを意味します。法人税等は、利益の約30%支払わなければならないと覚えておいてください。

借入金の元本返済は、お金は出ていくものの経費となりません。従って、損益計算には関係してこないことから、必要利益算定の際に加味します。

反対に、減価償却費はお金が出ていかない(すでに支払い済み)ものの、損益計算上は経費として計上されます。

このバランスが非常に重要になってきます。

第1回のコラムに添付した健康診断シートにも『必要利益』項目を記載しております。

まず、自社の『必要利益』をしっかりと把握しましょう。この『必要利益』を目標値として設定することで、経営計画の存在意義がとても強くなります。

 

まとめ

第1回のコラムにおいては、黒字化へ向けての自社の現状把握に重点を置きました。

今回は、その把握の結果をもとに経営計画を立案するための事前準備について記載しました。

中小企業にとって重要なキャッシュフロー維持の観点からは『必要利益』という概念は外すことができません。

経営計画を策定する際の目標値を漠然と設定することは非常に難しいです。したがって、まずは『必要利益』の額を把握したうえで目標値としましょう。

 

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