働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
目次
はじめに
この度の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、日常生活や事業活動に影響を受けていらっしゃる皆様に心よりお見舞い申し上げます。
政府より「テレワークで働く社員割合を7割まで高めてね!」との要請がだされましたね。お客様や自社の従業員をコロナから守るためにも、「テレワーク」の重要性がますます高まっています。
しかしながら、緊急事態宣言が出された4月~5月の期間中においても、テレワーク導入割合は3割に達していなかったとの統計が出ているようです。
大手企業やIT業界では取り組みが進んでおりますが、中小企業にとっては依然としてハードルが高いかもしれません。
今回は、テレワークに焦点を当て、在宅勤務・テレワークを助成する「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」について記載していきたいと思います。
前半戦では、税理士(コスト削減の視点)から見た「テレワーク導入」によるメリットとデメリットについて記載していきたいと思います。
申請内容や概要については、社会保険労務士先生が本職になりますので後半に記載します。
なお、今回の記事作成にあたっては、令和2年8月4日現在の情報を基に記載しております。また、多分に私見が含まれていることご理解ください。
テレワークのメリット・デメリット
テレワークについては、次の三つに分類されます。
- 在宅勤務
- モバイル勤務
- サテライトオフィス勤務
中小企業にとっては、サテライトオフィス勤務は経費面から若干ハードルが高そうな印象です。本記事では主に在宅勤務を想定して記載しております。
1.テレワークの効果(メリット)
①コストの削減
テレワークの導入により「オフィス家賃」及び「オフィスに付帯する備品消耗品購入費」の圧縮につながります。全社員・全営業日をテレワーク対象とはしなくても、テレワークシフトを組むことでオフィス必要面積の削減が可能です。
また、オフィスの維持に伴う、机や椅子の備品関係、ティッシュのような消耗品、水道光熱費の削減は自然と可能になるでしょう。
例えば、全社員対象に2日に1回のテレワークを導入したとします。シフトを上手に組むことで、出勤社員は以前の1/2となりますから、必要なオフィス面積は少なく見積もっても2/3くらいになるのはないでしょうか。オフィス面積が小さくなれば自然と光熱費の削減が可能です。
なお、テレワークはフリーアドレス制の推進にも直結します。乱雑なオフィスがきれいになるというような副産物もあるかもしれません。
②通勤時間の削減
総務省統計局の「平成28年社会生活基本調査」に基づく47都道府県のランキングでは、神奈川県の往復通勤時間の平均は1時間45分で全国一位となっております。通勤時間が長くなれば長くなるほど通勤ストレスが高くなり、労働生産性が低下するとの指摘もあるようです。
通勤時間の削減により、労働生産性が向上すれば、残業代の削減にもつながるものと思います。
また、通勤に関する経費面からは、政府が推奨する7割のテレワークが実現できたとするならば、通勤にかかる費用を実費精算にすることで、通勤手当の大幅な削減につながるものと思います。
※2日に1回程度のテレワークですと、月単位の定期代の方が安くなる可能性があります。
③設備投資による業務効率化
テレワーク導入に際しては、ITツールを導入し、webミーティングやペーパレスで業務ができる環境を整備しておく必要があります。その結果として、オンラインでのスピーディーな情報共有が可能になったり、データ入力等のルーチン業務が自動化されたり、書類の電子化による印刷が不要になったりと業務効率が大きく上昇します。
経費削減という観点からは、事務用消耗品の消費(コピー用紙、複合機カウンター料金、プリンターインク代)が抑えられる傾向にあるものと思います。
テレワークによる場合、オフィス勤務時と比較して、突発的な電話対応や会議などが発生しずらいことから、作業を中断させられることが無いため、業務効率化という点では更なる向上が期待できます。
④人材確保・雇用の創出
人口構造が変化し少子高齢化が進む日本においては、今後の労働人口の減少が危惧されております。そのような環境下において、育児や介護を理由としてに仕事を諦めざるを得なかった方の確保は今後の課題となってくるはずです。
働く場所にとらわれないということは、働く意欲があっても諸事情により働くことができない人々の活躍できる環境を整えるという点で、社会にとって非常に重要な役割を担っているものと思います。
2.テレワークの留意点(デメリット)
①設備投資
テレワークを成功させるためには、パソコン等のハード面のみならず、コミュニケーションツール等のソフトウェアの導入も必須となります。従業員の皆様が快適にテレワーク出来るような体制を構築するには、莫大な資金が必要となります。
この資金を補填するために、今回紹介する「働き方改革推進支援助成金」をはじめ、地方公共団体からも多くの助成金が出ております。上手に助成金を活用しインフラ整備を行ってテレワークの成功につなげましょう。テレワークのために導入した設備により現状のオフィスワークと比べても業務効率が上がるのであれば一石二鳥です。
②労働時間の管理
テレワークは、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であることから、子育て、介護と仕事の両立手段となるとともに、ワーク・ライフ・バランスに資することができます。
その反面、事業者側からは「労働時間の管理が難しい」等が、労働者側からは「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」、「長時間労働になりやすい」等の点がそれぞれ挙げられています。特に労働時間の管理や長時間労働の問題については、働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)においても、テレワークが長時間労働につながるおそれがあることが指摘されています。
③コミュニーケーションの不足
テレワークにおいて、コミュニケーションの不足は避けられないかと思います。多くの場合、チャットやオンライン会議システムで十分コミュニケーションできますが、オフィスでの会話に比べると、どうしても情報量が少なく、時間もかかりがちです。グループウェアやファイル共有システムの導入も必要となるかと思います。
また、仕事の指示を出す際にも、対面での伝達方法をはことなり、できるだけ明確な指示内容にすることが重要かもしれません。
後述の助成金の申請にあたっては、テレワークの実績等を証明するため、従業員の業務日報等の提出が求められます。現在、報告体制が確立されていない事業者さんにあっては、報告体制を構築するための良い機会かもしれません。ピンチをチャンスに。
3.弊社にてテレワークを導入した感想
①弊社既存設備
- 一人につき、デスクトップPC1台と外勤用ノートPC1台(ノートPCを在宅勤務用に使用)
- グループウェア
- ペーパーレス対応複合機
- ファイル共有システム
②テレワークに伴い導入した設備
③反省点
- コミュニケーションツールをたくさん使いすぎた。eメール、グループウェア、チャットシステム等を並行して使用したため、後々見返す際に、探すための時間がかかる。
- セキュリティー面から、通信環境については、自宅のネット環境を使用せず、USBタイプのデータ通信端末を使用した結果、契約容量が足りなくなった。
- お客様へのテレワーク導入に関する周知が不足していた影響か、問い合わせへのレスポンスが若干悪化した可能性あり。
税理士事務所という仕事柄、セキュリティ面を考えると全ての業務を在宅勤務でというわけにはいきませんが、上述の設備をそろえることで、概ねテレワーク導入体制は整っていたのではないかと思っております。
もともと、北海道の本社と横浜の支社で同じ環境で業務にあたれるようにと、弊社代表甲賀が組み立てたベースがあり、この仕組みをすぐさまテレワークに応用できたものと思っております。
やはり、テレワーク導入にあたっては、先も考え長い目で仕組みづくりをしていくことが重要なんだなと実感しました。
7割のテレワーク=出勤日を3割減=出勤日は1週間に多くても2日と考えると、コミュニケーション不足も発生はするものの、大きな問題は生じないかなという印象です。
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)について
在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。
各事業場における労働時間、年次有給休暇などに関する事項についての規定を、労働者の生活と健康に配慮するとともに多様な働き方に対応して、より良いものとしていくことを目的としています。
1.申請期間
令和2年4月1日から令和2年12月1日必着
※予算がなくなり次第終了です。
2.給付対象者(概略)
-
労働者災害補償保険の適用事業主であり、労働保険を滞納していないこと。
- テレワークを新規で導入(試行導入中の事業者含む)する、又は、継続してテレワークを活用する事業主であること。
- 規模要件はこちらのPDF参照。
3.テレワークに向いている業務
テレワークに向かない業種としては、一般的には以下の「業種」が挙げられます。
「生産業・製造業」「接客業・小売業」「医療業・福祉業」
逆に言うと、上記以外の業種はテレワーク可能ということになるかと思います。また上記の業種においても「業務内容」の側面から見ると、テレワークを導入できる部署があるかもしれません。
【テレワーク向きの業務内容】
- 資料作成や、データ入力分析等の事務業務
- 外回りがメインであり直行直帰が可能な事務業務
- IT関連事業
- 管理職が行う、社内の管理業務
いっぺんに全社統一してテレワークを導入するのではなく、段階的に導入していくことも成功のためには必要ではないかなと思います。
4.対象となる取組
次のうち、いずれか1つ以上の実施が必要です。
- テレワーク用通信機器の導入・運用
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング
5.成果目標の設定
支給対象となる取組は、以下の「成果目標」を達成することを目標として実施
- 評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。
- 評価期間において、対象労働者が在宅又はサテライトオフィスにおいて
テレワークを実施した回数の週間平均を、1回以上とする。
6.評価期間
成果目標の達成の有無は、事業実施期間(交付決定日から令和3年2月15日まで)の中で、1か月から6か月の間で設定する「評価期間」で判断します。
7.支給額
①対象経費
- 謝金、委託費、旅費、借損料、雑役務費、会議費、印刷製本費、機械装置等購入費、備品費、
②助成額
対象経費の合計額 ✖ 補助率(※上限有り)
③補助率
8.申請様式については公式HPよりダウンロード可能です。
まとめ
今回は、テレワークについて記載しました。
1日の全国感染者数が連日1,000人を超えるような状況下においては、やはりテレワークの導入は必須になってくるのかと思います。
コロナ終息後についてもテレワークの流れが通常化するのであれば、今のうちに(多くの助成金が手当されているうちに)テレワーク体制を確立しておくことも重要なのではないかと思います。
就業規則の見直しや各種規定の改定等が必要とはなりますが、周りの会社に先立って、新しい生活様式に見合ったのものへ改定することも、今後の人材確保等にプラスに働いていくのではないかと思います。
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